千葉市の体験型観光プランを産み出し、紹介する「千葉あそび」と、地域の暮らし体験を提供するサービス「aini」がタイアップすることになりました。
2016年11月、地域に眠るあらゆる価値を”シェア”し、人と人との新しいつながりをもって街全体を活性化させる取り組みーー「シェアリングシティ宣言」への参加を発表し、ますます魅力的な街づくりに向けてアクセルを踏んだ千葉市。
「これからの街づくり」を真剣に考え、地域の魅力をより”オモシロく”発信する二つの団体が提携することで、いったいどんな化学反応が起こるのでしょうか。今回は「千葉あそび」の仕掛け人である、千葉市観光プロモーション課課長・桜井篤(さくらい あつし)さんにお話を伺ってみました。
■お話をきいた人
株式会社リクルート出身。約20年にわたって編集や広告制作の仕事に携わり、「じゃらん九州版」や「おとなのいい旅」など旅行情報誌の編集長を務めた。その後”魅力発掘プロデューサー”として独立。佐賀市観光協会での勤務を経て、2013年より千葉市の集客観光課集客プロモーション担当課長に就任。2016年4月より現職。
”魅力発掘プロデューサー”、桜井さんのお仕事とは?
ーーさっそくですが、桜井さんは、普段どのようなお仕事をされているのでしょうか?
桜井篤さん(以下、桜井):私は、千葉市の「観光プロモーション課」に所属しています。さまざまな業務がありますが、(千葉市の)地域資源を、観光の目的として体験して楽しめるように加工してプランにして、それを発信し、訪れる人にも受け入れる側にも喜んでもらう……という仕事をしています。
ーー桜井さんは、”魅力発掘プロデューサー”という肩書きもお持ちですね。こちらはどのようなお仕事でしょうか?
桜井:さきほど申し上げたようなことをする役割のことだと自負しています。文字通り、魅力を発掘してプロデュースすることですね。地域の観光振興に携わっている方は多かれ少なかれしていることだと思います。この仕事は、地域の観光資源にスポットライトを浴びせるだけではなく、そこに訪れた方が、ご自分の中にひとつ新しい「楽しみ方」を培うことができる、そういう喜びをも提供できるのです。
例えば、市内に「千葉ポートタワー」という観光名所があります。一階で売っているソフトクリーム(千葉県産生乳100%使用)が人気なんですが、ここの売店には他にも、お土産や特産品を置いているんですね。
その中に千葉県産のしょうゆがありまして。それで……この二つを合わせてみたら良いんじゃないかと。
ーーえっ! 「ソフトクリーム」と「しょうゆ」を、ですか?
桜井:そう、びっくりするでしょ? 今発行中の「千葉あそび~2017年秋・冬号~」で誕生した(千葉ポートタワーの)体験プランでは、スタッフさんがこの新しい食べ方を教えてくれて、試してみたい人には、ソフトクリームにしょうゆを少しかけてくれます。すると、ホントにおいしい!今まで味わったことがない、新しいおいしさに出会えるんですよ。……これ実は内緒で、プランの説明書きには一切載せていないんですけどね(笑)。
予定にはない、意外なことを知った時って、ちょっと興味が湧きますよね。こうやって、地域の良いものと、人の興味をつなぐ。それが”魅力発掘プロデューサー”の仕事ですね。
5千年前の貝塚が今に伝える、千葉市の魅力
▲千葉市若葉区にある、加曽利(かそり)貝塚公園。
園内には博物館や復元住居があり、火おこしなどの体験ができる。(写真提供:千葉市)
ーーでは、魅力発掘プロデューサーの桜井さんから見て、千葉市の魅力はどんなところでしょうか?
桜井:たくさんあって……何を話そうかな(笑)。そうだ、「加曽利貝塚(かそりかいづか)」が良いかもしれない。この貝塚は、千葉市の魅力を証明しているんです。
ーー貝塚が、千葉市の魅力を証明している?
桜井:はい。千葉市は貝塚の街なんですよ。市内の加曽利エリアに「北貝塚」と「南貝塚」という遺跡があって、二つの貝塚は距離的には近いんですが、できた時代が千年くらい違います。
これが何を意味するかというと、狩りをして、移動しながら生活していたはずの縄文人が、なぜか千年以上も一つのエリアに住み続けていた……という事です。これは世界的に見ても、すごく珍しい例だそうです。
つまり、食べ物が豊富で住みやすいから、当時の人びとは移動する必要がなかったみたいなんですね。遺跡からは貝殻の他に、魚やイノシシの骨、炭になったクルミなども出土しているそうです。海と山と森に囲まれていて、食べ物がたくさんあって……。今の千葉市もそうですよね。加曽利貝塚は、この地域が大昔から資源豊富で、住みやすい場所だということを証明しているんです。
”人と人、魅力と魅力を繋げて、新しい価値をうむ”ーー千葉あそび流「体験型観光」のおもしろさ
▲千葉市の体験型観光プラン集『千葉あそび』。
2016秋号からは、市原市・四街道市の体験プランも掲載している。(写真提供:千葉市)
千葉あそび
千葉市周辺の「海、里、まち」を満喫できる体験型観光プランを紹介する、季刊の無料誌。千葉市・市原市・四街道市を舞台にした、さまざまな「楽しみ方」を提案している。
ーー千葉市は、昔から豊かで魅力に溢れた土地だったんですね。では、今お話しいただいたような「土地の魅力」を、どうやって「千葉あそび」の体験プランへ結びつけていくのでしょうか?
桜井:貝塚の話で言うと、普通に遺跡を見に行ったら、「ふーん、貝がいっぱいあるなぁ」で終わっちゃうんですよね(笑)。でも、それだけじゃもったいない。
まずは、加曽利貝塚博物館の方にいろいろと聞いてみました。お話を伺う中で、遺跡で出土した貝殻の約9割を占める、「イボキサゴ」という小さな巻貝に注目したんです。調べてみると、今も県内の一部でとれることがわかりました。
実際に貝をとりに行って、縄文時代の人びとがしていたように、焼いたり、ダシをとってスープにしたりして食べてみました。これがなかなかおいしい! そこで、見学に来た人にも「イボキサゴ貝」を食べてもらったら良いんじゃないか、と提案しました。
地元でイタリアンレストランを営むシェフに声をかけて、よりおいしい「縄文スープ」に仕上げてもらいました。こうして、遺跡の見学に加え、縄文時代の食生活を体験するプランができあがったんです。
ーーすごい! 体験プランをつくることで、千葉市の歴史や人、その人が持っている知識や技術のコラボレーションが実現したんですね。
桜井:体験に参加した人にとっては、貝塚を見るだけよりも、実際に食べてみた方がグッと興味が湧くと思うんです。人の興味を「刺激する」、その人が今まで知らなかったことを知ってもらうーー。そんな体験づくりを心がけています。
千葉あそびとainiがタイアップ
aini
ローカルな暮らし体験を検索・予約・掲載できるサービス。農家の暮らしに触れられる自然体験、その土地ならではの魅力を感じられる街歩き、さまざまな技術や知識を学べるワークショップから成り、「暮らし」を体験したい人と、自分の「暮らし」を紹介したい人を繋げている。
ーー千葉市の体験型観光プラン集「千葉あそび」は、今回、地域の暮らし体験を提供するサービス「aini」とタイアップする運びとなりましたね。これにはどういった意図、狙いがあるのでしょうか?
桜井:ainiに期待することは、大きく三つあります。
まず一つ目。千葉あそびは地元で人気のコンテンツですが、その内容を東京、首都圏全域の方に知ってもらいたい。二つ目に、日本各地のユニークな暮らし体験があるainiの中で、千葉市のプランがどれだけ人に興味を持ってもらえるのか、需要があるのかを知りたいです。
そして三つ目に、ゲスト同士の交流に期待しています。ainiは会員制を取り入れていますよね。同じ体験に参加した人同士がちょっと知り合いになったり、情報交換をしたりして、それぞれの興味を伸ばしていく……。参加して終わり、じゃなくて、「ゲストが、体験したをことを次につなげられる土壌」というものが、ainiには整っていると感じています。
ゲスト同士だけではなく、ゲストとホストの交流も楽しみですね。ホスト側にとってゲストの意見は貴重ですし、体験に参加した人が自分の興味を掘り下げて、今度は体験を”つくる側”になるかもしれない。そういう循環ができて、体験自体の質がもっともっと良くなっていくといいですね。
千葉市と「体験型観光」のこれからーー2020年、東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて
ーー最後に、これからのことについてお伺いします。ainiとのタイアップを通して、千葉市の観光をどのように発展させていきたいですか?
桜井:今は市内のいろんなことが、2020年のオリンピック・パラリンピック(※)開催を一つの節目として捉え、そこに向かって動いています。観光においては、東京とは違う「千葉市の価値」を伝えたい。
(※2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、千葉市の「幕張メッセ」で全7種目の競技が開催される予定です。)
そこで、先ほどの”ゲストとホストの交流”を通じて、千葉市全体で「おもてなしの経験」を積んでいきたいと考えています。多くの方が体験プランのホストを経験して、市外の人をおもてなしする風土を培い、おもてなしの土壌をより豊かにすることが、今後の目標ですね。
千葉あそび×aini
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