夢中が集まるプラットフォーム「aini」では、日本全国でさまざまな体験を提供するホストが集まっています。
この連載「コラボ企画インタビュー」では、その中でも企業や団体のホストのみなさんが体験を開催するまでの経緯や実施した内容、企画に込めた想いをお伝えします。
今回ご紹介するのは、小田急電鉄と取り組んでいる「小田急×aini」のコラボ企画について。小田急電鉄の社員で「小田急×aini」のファウンダーとして、企画の立ち上げ段階から取り組みを推進している木谷周吾さんにお話をお聞きしました。
小田急電鉄 木谷周吾さん
目次
-
小田急沿線70駅。すべての駅にホストを
-
親子向け自然体験だけがainiの価値じゃない
-
沿線に暮らす人の幸福度を上げたい
小田急沿線70駅。すべての駅にホストを
──ainiとの取り組みはどのように始まったのでしょうか?
木谷:2018年の4月に経営戦略部へ異動となり、観光領域の新規事業開発に取り組んでいました。観光商品を考えていく中で「旅先がいつも同じような場所ばかりで面白い体験がない」というお客さまの声が多くあったんですね。
旅先ならではのもの、現地の人が提供している体験が良いだろうと考えていた時に、CtoC向けの体験プラットフォームであるainiさんに出会いました。利用者層を広げようとしていたainiさんの意向とも合致して取り組みが始まり、一緒にやると決めてからは、2ヶ月ほどで最初の企画がスタートしたんです。
──最初の企画はどのように進んでいったんですか?
木谷:ainiさんに企画の世界観をつくっていただく形で、お任せしていました。何が出てきちゃうんだろうと内心思っていたところ、ainiの事業部長である原田さんが「偏愛ってどうですか?」と企画書を恐る恐る出してきたんです(笑)。
ホストも体験の登録もゼロからのスタートなので、最初は飛び出さなきゃいけない、尖りが必要だなと思っていました。まずはイノベーターのようなチャレンジングな層を引き込んで、ロングテール的に広げていこうと話していましたので、私はあっさりいいんじゃないと。
2019年の2月、小田急沿線のホストを募集するリリースを出して、3月にはマンホール偏愛の白浜さん、昆虫食偏愛の篠原さん、かつお偏愛のかつおちゃんにご協力いただいて、ゲストの募集をスタートしました。車内広告で昆虫のポスターを大々的に掲載するのは初めてだったでしょうし、社内的にはチャレンジングなPRだったと思いますが、自分としてはしっくりきました。小田急の中だけで考えていたら出てこなかった企画だと思いますね。
木谷:当初はホストが集まるのか、とにかく心配でした。ある程度まで広がるイメージは持っていましたが、尖ったホストばかりではないよなと。鉄道会社って地域に入りこんでいるようで、住民の一人ひとりや事業者の方との関係性は満足できるレベルでは築けていないんですよ。
だから、観光協会の方にホストになってくれそうな方をご紹介いただいたり、各地の行政や商工会議所を訪ねたり、自分の足を使ってがむしゃらに動いていました。今は「小田急×aini」があることで、地域に入り込んでいく良い足がかりにはなっています。小田急沿線の70駅すべてにホストを登録したいという当時の想いは今も変わらず持っていますね。
親子向け自然体験だけがainiの価値じゃない
──小田急線偏愛紀行がスタートしてからの感触はいかがでしたか?
木谷:ホストとしての登録が増えても、体験が登録されないという壁があり悩んでいました。企画に共感してくれているのに、なぜ体験を開催してくれないのか、突破口が見えない状態でしたね。
2019年の夏ごろ、下北沢駅構内を「小田急×aini」でジャックするプロモーションイベントを実施して、ホストから次のホストを紹介してもらうようなことが増えてきて、好循環が始まったんです。いまはainiで当たり前になっている初心者向けの体験は、多分私がこの時に発明したんだと思うんですよね(笑)。
木谷:下北沢って、小劇場だったりライブハウスが沢山あるじゃないですか。その中にいきなりガチャって入れる人は少ないですよね。劇団員の人と話すと「どんな人でも来てもらいたいんですよ」って言うんですけど、初めていく人にとってはハードルが高い。
じゃあ初心者向けの体験をやってみたらどうか、と「〈初心者向け観劇ツアー〉小劇場にコメディを観に行こう!【下北沢】」という体験を実施することになりました。団員の方の多くは、チケットを売るのに苦戦すると身の回りの人を中心に声をかけていくので、普段の公演はあまりいい席が流通しないんですよね。当日ふと劇場に入ったお客さんには後ろの方の席しか残ってない。しかも、公演が終わったら身内ばかりで話していて、すごい蚊帳の外にいる気がしちゃうというか…。
体験に参加いただいたainiのヘビーユーザーの方からも「壁を感じた」と感想をいただいたんです。団員の方たちは、いろんな人に来て欲しいと思っているし、壁を作っているつもりもない。こうした目に見えない課題が劇場に限らずあって、ainiで体験を開催することが何につながるのか、ホスト開拓をする上で伝え方を考えるヒントになりました。
──ainiでの体験のとらえ方が変わってきたんですね。
木谷:ただ面白いホストがいるだけじゃ、体験に参加してくれるとは限らない。ターゲットは親子で、キーワードは自然体験、アクセスは都心1時間以内…その3つが揃えば体験として外れないというのはあったんですが、もちろんそれだけじゃない。
「小田急×aini」として、どんな方にホストになってもらいたいのか。参加のハードルを下げた初心者向け体験のように、課題を見える化して、ホストの声を代弁できればいいんじゃないか。ainiの取り組みを通じて、色んな人の課題解決の話とどう絡められるか、自然体験以外の幅の広げ方を考えるようになりました。取り組みは魅力的だけど発信力が課題の事業者さんを「小田急×aini」を通じて、さらに多くの人に知ってもらい、集客にも貢献していきたいですね。
──印象的なホストさんとの出会いはありましたか?
2020年、2021年とaini MVPを受賞した親子パン教室「tiffany studio」さんです。「小田急×aini」のアカウントでインタビュー記事も掲載していますが、取材で訪ねた際は「小田急で一緒に働きませんか?」と思わず声をかけてしまったくらい魅力的な方でした(笑)。
実は私もホストとして、初心者向けの釣り体験を開催したんですよ。いつかホストをやろうとは思っていたんです。「子どもがやりたいって言ってるんだけど、教えられない。どこへ行けばいいか、わからないから連れて行って欲しい」という声が周囲で増えてきて。
ホストを自分でやってみたことでの気づきは沢山ありました。例えば、初心者の中にも上中下あって、道具を持っているかだったり、釣りに行った経験があるかだったり、初心者というだけでもひとくくりにしちゃいけないんですよね。これは実際にやってみなきゃわからないなって。初期に訪ねたホストへ改めて説明したら、当時と比べて言ってることがかなり違うかもしれないですね(笑)。
──「小田急×aini」として、これからの成長に向けたポイントを教えてください。
木谷:ポイントは、登録してくれたホストが体験を開催してくれるかどうかですね。大切なのは仲間でやること、「こういう風にやるんだ」とホストを検討している仲間へ実際に見せることだと思っています。
神奈川県の南足柄市では、2021年の4月からホストを検討している方向けのツアーを実施し、10月、11月に1回ずつホスト説明会を開催しました。このホスト説明会に参加いただいた方が、今度は実際にホスト側になって、新たにホスト登録を検討している方向けにお試し体験を開催したんです。同じような仲間がホストをやっている姿を見ると、参加者のみなさんも自分がホストになるイメージが湧いてくるんですよね。
2021年12月、より多くの人を巻き込んで進めていきたい、という考えもあって各地域の事業者さんのことをよく知っている平塚信金さんとも連携協定を結ばせていただくことになりました。沿線にある信金さんや各地の行政、観光協会といったパートナーと連携を強めながら、今のような取り組みを繰り返していけば、自然発生的にホストが生まれるようになっていく手応えはあります。
ネオ製肉店 湘南メンチのナオキ君さんの体験
──今後のビジョンをお聞かせください。
木谷:人と人だけでなく、人と地域もつなげていきたいですね。人の幸せって一体なんなのかをよく考えるようになったんです。「いろいろなサードプレイスを持っている人ほど、幸せなんじゃないか」というのが最近の答えで。サードプレイスってスタバみたいなイメージが強いですけど…じいちゃん、ばあちゃんの家みたいな場所、田舎を沢山持っていると絶対幸せになるなって。
できれば小田急沿線に来て欲しいですけど、まち歩きや自然体験、さまざまなカテゴリのホストと全国各地でつながっていれば、サードプレイスとしての場所が増えると思うんです。そんな場所を小田急沿線にも増やして、沿線に暮らす人の幸福度を上げたい。「小田急×aini」はいいきっかけになってきていると思いますし、その役割をもっと担っていきたいと思っています。
まとめ
ainiとのコラボレーションを通じて、地域と人をつなげ、そこに暮らす人の幸福度をあげていく。小田急沿線という地域にひもづいた、小田急電鉄さんとのコラボレーションだからこその夢が溢れるビジョンをお話しいただきました。小田急沿線の全70駅にホストが登録されるその日が待ち遠しいです。
「小田急×aini」では、小田急沿線で体験を開催し、幸せをシェアしてくださるホストの方を募集しています。