泉鏡花「外科室」は文語体ゆえに凛とした情念が感じられるのです。

2021/4/3(土)

実に、泉鏡花らしい静かなる情念のお話です。


医学士高峰の執刀によって

外科施術を受ける貴船伯爵夫人。


「手術台なる伯爵夫人、純潔なる白衣を纏いて横はれる」


だが、伯爵夫人は、麻酔はいらないと言う。


「私はね、心に秘密がある。麻酔剤は譫言を言ふと申すから、

それが怖くてなりません」


麻酔なしでの手術が始まる。

「見れば雪の寒紅梅、血汐は胸よりつと流れて、白衣を染むる」


医学士高峰が訪ねる。

「痛みますか」

「否、貴下(あなた)だから、貴下(あなた)だから」


二人の関係がただならぬものだということが

うかがい知れます。


二人にどんな過去があったのかは

読んでからのお楽しみです。



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