須賀敦子輪読47回読書記録 旅のむこう
2022/9/12(月)
9月1週47回目の輪読は「旅のむこう」でした。
ゲストさんの読書記録を投稿いたします。
読者の感想もそれぞれで、感想を読んで、そうか、と、もう一度作品をかみしめるのも楽しいです。
いつか、何かの形でまとめたいと思っています。
よい方法があれば教えてください。
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「旅のむこう」
須賀さんの日本での新婚旅行は冬の九州だった。
結婚に大反対していたはずの父が、帰国した若い夫婦に用意してくれたのは、父母の新婚旅行先でもあった別府への旅。
豊肥線で向かうその旅の途中、列車は母、万寿の実家があった大分県竹田市を通る。
本作はその車窓の景色を映して始まる。
万寿はこの豊後竹田の武士の家系にあり、9人兄弟の末から2番目として後に一家が移る大阪で生まれている。
須賀さんはこの旅の思い出に、母への想いを絡めていく。
それまで須賀さんの生き方は、当時としては珍しいヨーロッパを周遊した経験のある父の影響が強かったのであろうと思っていた。
しかし本作を読み、万寿が誰よりも娘の良さを理解しており、それを守る姿勢を貫いたからこそ実現したのだと改めて知る。
「これがいちばん、あなたらしくて、ママは好き」
放送局勤務時代、同僚が撮影した、須賀さんが一心不乱に本を読む姿の写真を見つけてのひとこと。
「このところ、自分の生き方をサボっているみたいなおまえを見ていると、わたしはなさけなくなるわ」
「一日も早く、東京に行くなりなんなりして、自分の考えていたような仕事をみつけてちょうだい」
フランス留学から帰国し、久しぶりの実家でくつろいでいた際のこと。須賀さんは、とどめを刺されたと記している。
何より周囲の目もあったであろうに、この時代に外国へ行くことを許し、なおかつ年頃の娘に対し結婚をせかさなかったとは。(しかもイタリア人の夫を連れて帰って来た!)
須賀さんも長い間ふたつの家を持つ父に苦労した母を慮ることを忘れなかった。
万寿の誕生日には須賀さん自身が日本語訳のルビをふった、イタリア語の絵本を日本に送っている。
海外留学後から手紙のやりとりが増えたというのだから、一番の理解者であったことは間違いないだろう。
前出の「夏のおわり」とともに、母へのオマージュが感じられる作品であった。~めるさん記
ご一緒に須賀敦子を読んでみませんか
https://helloaini.com/travels/32589