宮沢賢治『気のいい火山弾』

2022/8/12(金)

ゲストの方から、ご予約があった時に、『気のいい火山弾の絵本を読んでいて』という理由で、このツアーのお申し込みをいただいたとのことだった。

普段から、富士山を案内していて、「マインクラフト」などの影響で黒曜石はあるか、また「ブラタモリ」で富士山のことを授業でやったなどの事を聞くことはあるが、『気のいい火山弾』は、初めてだった。今福隆太『宮沢賢治デクノボーの英知』でも、気のいい火山弾は、最初にとりあげられており、現代の人が持ちえる自然への「リスク」「危険」という感覚と、賢治の世界での、火山への「畏怖」同時に「親しさ」を併せ持つその感覚が対比されていることを端的に表現する重要な位置付けの短編だ。


べご(牛)岩と名付けられた火山弾は、その要旨をほかの岩石に馬鹿にされつつも、気をよく過ごしており、コケなどと共に生きていたが、研究者に貴重な岩だといわれ、持ち去られるという話だ。コケとの離別の悲しみを持ちつつ、運命を肯定する態度をとる結末となるが、富士山のスコリアの上にある火山弾は、それこそスコリアが、風雨で動き続ける世界で唯一その質量により安定しており、確かに火山弾の付近にはコケが生えていた。火山弾が親しみを覚えるという表現であったが、ここでは逆にコケたちにとってもその存在が無くてはならないものであった。


今回そのようなリクエストをいただき、火山を歩いたが、実際は火山弾よりも、コークスのようにキラキラとした光沢のあるスコリアを見つけ、その中に黒だけではなく、緑色や赤色の輝きを見出すことにゲストの子供さんは、夢中になっていた。自然との関わりの親しさは、それぞれの時代に、それぞれの感性で、見出し自然と人との橋を渡すものであっていいのだろうと思う。


体験はこちら

https://helloaini.com/travels/10171

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