渋谷駅の景色が変わる年

2020/3/5(木)

観光というのは、特別な景観を眺めるとか、歴史や物語の舞台に思いを馳せるとか、立派な建造物に感心する、ということなのでしょうか。有名な景色であればその場所を確認するだけでもよいのかも知れません。スクランブル交差点はその例になりそうです。お墓とか石碑など、モニュメントとして観光資源になっているところは数多くあります。渋谷を代表するといわれているハチ公像もそのたぐいといえるでしょうか。


でも、わたしがご案内する体験は、それらのどれにも当てはまらない、これからつくられる景観を想像しながら、現在の様子を見て歩く、というものです。

進行中の物語であり、現在の建物が消えて、新しい景観が生まれていく過程を見ていこうという、他では得難いものなのです。

工事現場というものは、通常なら見物の対象ではないのですが、渋谷駅の場合、駅としての機能をそのまま維持しつつ、同じ場所に全く新しい駅の施設を作るものです。ですから工事現場が否応なく見えてしまうことになります。


駅周辺のすべてが完成するのはこれから8年後の2028年になるようです。その時には現在の光景がどうだったかを思い出すことが難しくなってしまうでしょう。いや、過去どうであったかに関心のない人たちの渋谷駅になっているのかも知れません。ハチ公伝説が信じられないような駅の姿になっていてもおかしくありません。

そして2020年の今年は、これまでの景色が消えてしまう年ともいえるでしょうか。渋谷マークシティが開業してから20年、渋谷スクランブルスクエア東棟と渋谷フクラスが開業し、地下鉄銀座線の駅もすでに移りました。東急東横店の西館と南館が解体準備に入り、埼京線のホームが山手線ホームと並ぶことになります。そのために改札口も変わることでしょう。井の頭線と山手線を結ぶ連絡通路も変わりそうです。


いつも通路が変わって分かりにくい、ということで悪評の多い渋谷駅なのですが、それを楽しむことが許されないことではないはずです。

日々更新されるダイナミックな景観を、これから8年かけてご案内してまいります。



この記事を書いたユーザー

不適切な内容を報告する