鶏の廃鶏について。
2022/3/10(木)
山梨県の丹波山村という場所でジビエ処理場を運営、猟師をしている中澤です。
丹波山村は関東一人口の少ない530人の村で限界集落ですが、
猟師は30名という稀な”狩猟の村”です。
昔よりの狩猟文化がありとても素敵な土地だと思います。
丹波山村の猟師の特徴は、”百姓”であり
養蜂や養鶏、原木舞茸栽培、釣り...と狩猟の「獲る」ことだけに特化してない点です。
そういった生活文化の中で狩猟にまつわる様々な体験をしてもらいたく準備しています。
その一つとして平飼い養鶏、鶏の屠畜のお話。
「平飼い養鶏とは」
動物福祉に準じた、生きている間の動物福祉。
ストレスのない生活環境を作り健康的で美味しい卵を生産する育て方です。
「日本の一般的な養鶏施設」
・狭い土地、範囲でコストはかけず卵を生産したい。
・ゲージ飼育(バタリー、エンリッチ、エイビアリーという三段階の大きさ)による環境の生産になる。
・自由に動きにくい環境。
スーパーなどで売られている卵のほとんどはケージ飼いによる卵になります。
日本の養鶏におけるケージ飼いの割合は94%ほど。
多くの養鶏場がケージ飼いを採用している理由は、生産効率を上げるためです。
ケージに入れて、何段にも積み重ねれば、平飼いよりもずっと多くの羽数を飼うことができます。
この結果として、人件費や設備費などのコストを下げることが可能となり、卵は栄養価の割に安い価格となります。
その中で最も自由度の高い平飼いというのは大変利率が悪く、また広い土地と手間が必要ですので約6%の農家さんしか平飼い養鶏の手段を用いていません。
「廃鶏について」
平飼い養鶏の農家さんも生産効率が必ず落ちますので、どうしても廃鶏という現状が起こってしまいます。
そして廃鶏の際に、鶏を「廃鶏業者さんに買ってもらう」という事が一連の流れとなります。
今回の鶏たちも廃鶏ということはいたしかたなく、私たちが頂くなくとも廃鶏となる鶏たちになります。
「生物として」
鶏の幸せとは羽を広げられ、地面をつつき、仲間と話したりケンカをし、留まり木で眠ることかと思います。
野生では生きれない家畜でありますが平飼いの鶏は生物として幸せだと私は思います。
「平飼い養鶏」と野生動物を捕獲する「ジビエ」の共通点は、
生きている間の尊厳は生物として最大限、彼らは幸せだったということ。
屠畜という経験をしていただき、生きものと食べ物の繋がりを考えていただくきっかけになればと思い、鶏の解体を企画致しました。
私自身、事務所で鶏4匹と生活しているのと鶏のお肉は昔からあまり好きじゃないので、正直屠畜はやりたくないのが素直な気持ちです。
猟師をし、仕事でも狩猟をしている中で、「動物が死んでいく、それは自分が殺した」
という体験というのは、生活の中で非常に色々な事へ作用すると感じています。
この企画を考えているのはわたしが狩猟で体験していることの一端を、少しでもお伝えできたらと思う思考からなのかもしれません。
タバジビエ 中澤