須賀敦子「銀の夜」を読む
2021/11/22(月)
いちめんの白い雪景色。
そのなかで、黒い、イッセイ・ミヤケふうのゆるやかな衣服をつけた男が数人、氷の上でスケートをしている
・・という書き出しで、はじまる「銀の夜」
須賀さんの文章にイッセイ・ミヤケが出てきたことに親近感を覚えたが、
この日、私は時間がなく、とりあえず、一通り読みすすめることにした。
須賀さんは、帰国して勤めた大学の同僚の部屋で、ある絵葉書を見つける。
© Simone Giacomelli
この写真には、詩がそえられている。
~わたしには手がない
やさしく顔を愛撫してくれるような・・
写真を写したのは、マリオ・ジャコメッリ。
書かれているのは、須賀さんのなかに生きつづけている詩行で、
ダヴィデ・マリア・トゥロルド神父の処女詩集の冒頭部分だった。
「コルシア書店」をはじめた神父である。
マリオは、モノクロームの画像に詩をそえた作品を発表する。
それが、世界的評価を高める。
ダヴィデ神父のことを書いたエッセーの冒頭部分である。
須賀敦子著「コルシア書店の仲間たち・銀の夜」
須賀敦子の筆力に圧倒され、イタリアのことを知る喜びを与えてくれた作品でした。
須賀さんの観察・洞察力は、本人よりその人のことがわかっていると思えてしまう。
ダヴィデ神父が求めた共同体のことは、よく理解できたのだけれど、
タイトルを「銀の夜」にしたことが、すっきり落ちてこなかったのだけれど
エンディング近く
次の詩行について、ゲストさんと話す中で、ダヴィデ神父の求めた生活を理解したような気がしました。
~あかるいしずかな日々、銀の夜。
小川は、森と畑を縫う真珠のくさり。
もう土はパンと血に匂っている。
「復活祭の前夜」という詩である。
ダヴィデが、いつかはこうありたいと夢みた風景が窓外にある。
もとめた共同体と教会活動がそこにあった。
暮れなずむ平野に、月が出ているにちがいない。
「ミラノ霧の風景」もすばらしいのですが、須賀さんは才能を小出しにしたのかしらと思うほど
「コルシア書店の仲間たち」には、圧倒されます。
「銀の夜」を読むと、須賀さんの小説も読んでみたかったと思わずにはいられないけれど
読む楽しさと知る楽しさを教えてくれる須賀作品を読めることに感謝。
マリオ・ジャコメッリを教えてくれてありがとう・・敦子さん。
須賀敦子の本を読んでいます。ジーンときますよ。夜の時間のリクエストもお待ちしています。明日は「街」です。
須賀敦子を読む<コルシア書店の仲間たち>11月開催日のお知らせ