尊さに 皆おしあひぬ 御遷宮
2021/9/6(月)
旧暦9月6日に大垣を出発した芭蕉は
旧暦9月11日に伊勢に到着します。
芭蕉が奥の細道を旅した元禄二年(1689)は
伊勢神宮第46回式年遷宮が斎行された年です。
奥の細道の旅のもう1つの目的は、
伊勢神宮の式年遷宮を見ることであったと
いうことができると思います。
伊勢到着を逆算しての深川を3月27日に
出発したものと思います。
大垣では二週間も逗留していますから
旅の疲れを癒すとともに、御遷宮の日に
あわせた調整をしていたのだと思います。
大垣から揖斐川を下り、伊勢長長島に到着
伊勢長島では大智院という寺に宿泊。
この寺は曾良の叔父が住職をしています。
伊勢長島からは舟で桑名に渡り、陸路で
伊勢を目指します。
桑名から東海道を南下、日永の追分(四日市)
で伊勢街道に入り、白子、津、松阪、斎宮、
そして伊勢へとおよそ十八里(約70km)の距離
を歩きます。
式年遷宮のクライマックス遷座式は
内宮遷座 9月10日
外宮遷座 9月13日
芭蕉が伊勢についた時点では内宮遷座は
終わっていました。
芭蕉が見たのは外宮遷座となります。
日程を芭蕉が間違えるのは考えずらく
最初から外宮遷座を狙っていたのかと思います。
以前内宮を参拝した時に、僧のような
姿であったため間近での参拝が出来なかった
ことも内宮遷座を目指さなかった理由かも
しれませんね。
遷宮を一目見ようと思うのは今も昔も
変わらないようです。
神聖な儀式でありながら、そのおかげを
いただこうと集まる多くの民衆の姿が
あったのでしょう。
その様子を見た芭蕉の句
『尊さに 皆おしあひぬ 御遷宮』
(※季語は「御遷宮」 秋の季語)
人々の神様への畏敬の念と熱気、そして
その中に芭蕉自身もいるのだということ
が伝わる句だと思います。
西行法師も、伊勢神宮御祭日に参拝し、
幽玄な木立の中に見え隠れする社殿や
参進する神職たちの姿に感動し
『何事なにごとの おはしますをば しらねども
かたじけなさに 淚なみだこぼるる』
との和歌を詠んだとされています。
三月末より記載させていただいた
奥の細道シリーズは、芭蕉の伊勢神宮
の式年遷宮参拝を持って完結とさせて
いただきます。