コラボ企画インタビュー Vol.1 沖縄美ら海水族館 「体験を通して見えた、これからの水族館のあり方」

夢中が集まるプラットフォーム「aini」では、日本全国でさまざまな体験を提供するホストが集まっています。

この連載「コラボ企画インタビュー」では、その中でも企業や団体のホストのみなさんが体験を開催するまでの経緯や実施した内容、企画に込めた想いをお伝えします。

今回紹介するのは、沖縄美ら海水族館の体験について。沖縄美ら海水族館の統括を務める、サメ博士の佐藤圭一さんと、沖縄美ら海水族館との企画を担当しているainiの賈 帆帆(ジャー ファンファン)さんにお話をお聞きしました。

佐藤さん

沖縄美ら海水族館 サメ博士 佐藤圭一

帆帆さん

aini 賈 帆帆

目次

  1. きっかけは一本の電話から
  2. 教えることだけが目的ではない
  3. 新しい水族館としてのあり方の模索

──沖縄美ら海水族館さんとainiとの企画はどのようなきっかけで始まったのでしょうか?

佐藤:ainiさんとのつながりができたのは、今年の3月に賈さんから「一緒にイベントをやりませんか?」と電話でお誘いをいただいたのがきっかけです。

賈:3月に開催した「親子でサステナブルオンラインスクール・どうぶつの未来をかんがえる日」の時ですね。お声がけする前に、WWFジャパンさんと旭山動物園さんが参加することが決まっていたので、ぜひ沖縄美ら海水族館さんにも登壇していただきたいなと思い、ご連絡させていただきました。

親子でサステナブルオンラインスクール~どうぶつの未来をかんがえる日~

──最初に話を聞いた時はどう思いましたか?

佐藤:それまで水族館の取り組みや展示生物の紹介をYouTubeなどで配信していましたが、それはこちらからの一方的な情報提供なので、参加者の反応が視聴回数や配信後のコメントでしか確認できなかったんですね。それとは異なり、オンラインでいろんな方と顔を合わせながら行う体験ができるのはとてもおもしろそうだなと直感的に感じて、お話を聞いた後すぐに参加することを決めました。

──オンライン体験の企画内容やプログラムはどのように決めていったのでしょうか?

賈:私たちからは「『どうぶつの未来をかんがえる』という大枠のテーマに沿った内容で、子どもたちに向けて1時間でできる授業を企画してほしいです」とお願いをしました。

佐藤:話を受けて、私たちでは体験のテーマに沿いながら、沖縄美ら海水族館らしさを表現できる企画を考えました。そこで決まったのが、ジンベエザメについて紹介する授業。やっぱり沖縄美ら海水族館といえばジンベエザメですから。私たちが話をするのに、ジンベエザメについて触れないと苦情が出るんじゃないかと思いまして(笑)。

賈:授業に参加した子どもたちが佐藤さんの話を聞いて楽しんだり、驚いたりしていた表情を今でも思い出します。子どもたちからたくさん質問が出てきて、時間が足りなくなるくらい盛り上がりましたね。

体験開催時の子どもたちの様子

教えることだけが目的ではない

──沖縄美ら海水族館さんはainiで今年10回以上体験を開催されましたが、水族館の職員のみなさんの反応はいかがですか?

佐藤:最初は私が率先してainiさんとの企画に参加していたんですが、今はいろんな職員が「こんなことやりたい」、「あんなことやりたい」と企画を考えて体験を開催するようになりました。このまま職員一人ひとりが美ら海の魅力を再発見し、伝える役割を担う存在になっていくといいなと思っています。

賈:本当に佐藤さんが最初に切り開いていってくださったおかげです。今は他の職員のみなさんと一緒にイルカや深海魚など、水族館にいるさまざまな生き物をテーマにした体験をご一緒させていただいています。

夏休みスタートダッシュ!自由研究スペシャル!1日まるごと沖縄美ら海水族館

──これまでの体験で印象的だったのはどのようなシーンでしょうか?

佐藤:一番驚いたのは、ainiさんと一緒に行った2回目のイベント「夜の沖縄美ら海水族館で体験する “サメ” の不思議な世界」ですね。参加者が400人を超えたのも驚きでしたが、コロナ禍においてこういう企画はオンラインじゃないとできないことだなと思いました。

沖縄美ら海水族館はアクセスがあまりよくない場所にあるんですよ。那覇空港から車で2時間かかるので、同じテーマの講演を水族館で開催してもなかなか人は集まりづらい。それがオンラインで開催すると全国各地、時には海外から多くの人が参加してくれるわけですから、アフターコロナのことを考えてもこうした機会がつくれるのはすごくメリットがあることだと思っています。

それと、オンラインで体験を開催すると、一人ひとりの顔がよく見えて反応がわかりやすいのもよかったですね。実際に対面する場で講演をするよりも、オンラインの方が情報を伝えやすいのかもしれないなと思いました。

夜の沖縄美ら海水族館で体験する「ふしぎなサメ」の世界

賈:私の中で印象的なのは「美ら海サメ博士教室」ですね。新たな試みとして立ち上げた「ainiコミュニティ(※)」の最初のコミュニティを沖縄美ら海水族館さんとご一緒させていただけたのはとても嬉しかったです。

※月額または年会費を支払うことでホストから様々なモノやコトを購入できるサービス

美ら海サメ博士教室は、サメが好きな子どもたちに向けてつくったコミュニティなんですが、募集を始めたらすぐに30人の定員が埋まってしまって。夢中が集まる体験プラットフォームと掲げているainiで、サメが好きな子どもたちとサメが好きな佐藤さんをつなぐことができたのでとてもやりがいを感じました。

佐藤:美ら海サメ博士教室は、年間を通して同じメンバーの子どもたちと関わるとてもチャレンジングな取り組みだと感じています。水族館にきてくれた子どもと、教室で年間を通して関わる子どもとではやっぱり関わり方に違いがありますね。長期的に関わるのであれば、単純に子どもを喜ばせるだけではなく、これからの長い人生にとってプラスになるような機会を与えてあげることが大切です。子どもたちが満足してくれることも大切ですが、様々な疑問を持つことの面白さ、好奇心の大切さに気付いてもらえるよう、バランスを意識しています。

賈:まさに今言っていただいた通りなんですが、美ら海サメ博士教室はただサメの知識を満たす場ではなくて。教えることだけが目的ではないのが、沖縄美ら海水族館さんがやられている体験の特徴だと思います。いい意味で先生と生徒という感じはまったくないですね。

サメ博士とサメの絵

──夏には、さかなクンとコラボレーションした体験も行われていましたね。

賈:さかなクンとの体験は、「TABICA」が「aini」にブランド名を改称したリリースを兼ねて開催しました。「好きなことをテーマにした体験が集まるプラットフォーム」として、ainiが提供するサービスに一番近いイメージのある人は誰かと内部で話をした時に、さかなクンの名前が多く挙がり、こちらからお声がけして実現した体験です。佐藤さんとさかなクンのコラボレーションはすごく好評で、日本全国から500人以上の参加者が集まりましたね。

佐藤:さすがにさかなクンは人気がありますね。さかなクンと沖縄美ら海水族館の相乗効果で本当に多くの人に参加いただくことができました。さかなクンが子どもたちにやさしく問いかけを行い、私たちが画像や詳細な情報を提供する、という進め方でしたがその形がよくフィットしていました。さかなクンに直接話ができるということもあり、子どもたちがとてもいきいきしていたように思います。

賈:参加者からは「夏休みの自粛期間に楽しい体験をありがとうございます」「沖縄美ら海水族館にまた行きたくなりました」「憧れのさかなクンと話せてよかったです」など嬉しいコメントがたくさん届きましたね。私自身も多くの人の好きや夢中を感じられた機会になりました。

さかなクンとの体験

──沖縄美ら海水族館さんがainiを利用してよかったと感じるのはどのようなところでしょうか??

佐藤:まずは、気軽にできるところがいいなと思っています。イベントや講座を開催する時に、自分たちでシステムを構築して、参加者を募り、参加費を徴収するとなると頻繁に行うのは時間がかかりすぎてなかなか難しい。そうした事務局的な役割をすべて担っていただいているのは、すごく助かります。

また、職員が自分で企画を考えて、責任を持って発言できる場を設けることは、職員一人ひとりが社会の中で自分たち水族館の役割を自覚できるいい機会になっていると思います。そうした挑戦的なことを気軽に試せるのはいいですよね。一度やってみてダメなら、改善すればいいわけですから。

賈:沖縄美ら海水族館のみなさんに「何か新しい体験をやってみたい」と感じてもらうのは、一緒に企画をする私たちがとても大切にしている部分です。

いつも新しい体験を行う時は、ainiから積極的に企画を提案させていただいていますが、沖縄美ら海水族館のみなさんからもやってみたい体験を多く提案いただいています。そのいい関係性があるからこそ、これだけおもしろい体験をたくさんつくることができているんだと思いますね。

他の職員の方が体験を開催している様子

佐藤:あともうひとつ、体験を開催した後に参加者からのコメントが私たちではなく、ainiさんに届くのもいい点だと思っています。私たちが参加者と直接やりとりしてしまうとポジティブな情報しか入ってこないのですが、ainiさんが間に入ってくれることで客観的な視点で捉えたフィードバックをいただいています。

賈:まさにaini側も「第三者視点は常に持っていたいよね」という話をしているので、そう思っていただけて嬉しいです。

届いたコメントは、ainiと沖縄美ら海水族館さんで一緒に確認して、積極的に改善に取り組むようにしています。お互いに、参加者が楽しむことを一番大切にしているからこそ、遠慮なく体験の内容や当日の運営について、フィードバックし合うことができているなと思います。

新しい水族館としてのあり方の模索

──今後ainiの中で開催したい体験やイベントはありますか?

佐藤:今は水族館の建物の中から資料を使った説明を主にしているんですが、いずれは水族館の外に出てみたいなと思っています。例えば、宇宙からの生配信はみなさん見たことがあると思うんですが、深海からの生配信は見たことないですよね。実際に海底の映像を配信するようなことも近いうちに試してみたいなと思っています。

賈:すごくいいですね!楽しそうです。

深海のイメージに近い水族館の写真

佐藤:また、サメだけでなく、サメに関係のある別分野の話もおもしろそうですよね。鮫肌の構造を工業製品に応用しようとしている人の話や、サメの遺伝子を研究している人による遺伝子レベルで見たサメと人との違いの話など、もう少し企画の幅を広げていきたいなと思っています。

広げるという意味で言えば、海外の科学者とも企画ができるといいですね。ただ子どもたちに向けた体験となると、どうしても言葉の壁が出てしまう。なので、音声を翻訳して字幕で表示できるようなAIとか、そういうシステムが将来できたらぜひ活用したいです。

賈:それはガイアックスがつくりましょう!すごくいいと思います。きっとそんなに遠くない未来で実現できるような気がします。

佐藤:私たちのこれからの目標としては、単純に魚のおもしろさを知ってもらうだけでなく、水族館を入り口に科学的な教育や自然環境の保全につながるようなことができたらいいなと思っています。人材育成など、私たちが持続可能な社会形成に貢献できるような企画を開催できるといいですね。

賈:沖縄美ら海水族館さんとainiが共通しているのは、社会に対して意識が向かっているところではないでしょうか。沖縄美ら海水族館さんが水族館を入り口にした科学や教育を意識されているように、私たちも自分たちのために何かをやるのではなく、「社会のためになるからやろう」というマインドを持っています。だからこそ、これだけ沖縄美ら海水族館さんと一緒に体験を開催できているんだと思います。

佐藤さんからは以前「新しい水族館としてのあり方を模索していきたい」というお話もお聞きしていますが、その部分にainiとして一緒に寄り添っていきながら新しい取り組みを続けられたらいいなと思っています。

まとめ

インタビューを通して、佐藤さんをはじめとした沖縄美ら海水族館のみなさんがainiでの体験を楽しんで企画していることが伝わってきました。そうした職員の方一人ひとりの夢中が参加者のみなさんに広がっているからこそ、沖縄美ら海水族館がひらく体験が多くの人に愛されているのだと思います。

沖縄美ら海水族館が提供している体験はこちらからご確認いただけますので、興味のある方はぜひご参加ください。

メニュー