吉原最後の引手茶屋・金村で開催
ご当地ソングであった民謡は、性売買を〝地元の名所〟として唄い継いだ──
当時の人々が共有していた遊廓観を、プロの演奏家を招いて体感する。
■知られざる民謡と遊廓の深いつながり
「民謡」と聞くと、牧歌的な労働唄、あるいは賑やかな座敷唄などイメージされますが、どのようなイメージであれ、民謡は現代生活にはやや縁遠い存在となっています。ためか、全国各地に残る少なくない民謡が遊廓について唄(謳)っていることはあまり知られていません。
■民謡を育んだ遊廓という場
ご当地ソングの性格を備えていた民謡は、遊廓を「地元の名所」として歌詞に織り込み、お披露目するに相応しい地場産業と見做していたのかもしれません。
歌詞だけではなく、成り立ちにも大きく関わっています。北海道江差町で愛唱される『江差追分』は民謡の王様としてよく知られます。当唄のルーツは遠く信州追分宿(現 長野県軽井沢町)にあります。追分宿周辺の馬方が謳う労働唄『追分節』、これを飯盛女が座敷で謳うことで洗練し、周辺に拡がっていきました。ついに『追分節』は越後山脈を越えて日本海側へ到達。北海道と大阪を結ぶ北前船は、遠く蝦夷地の江差まで運びました。
信州で生まれた『追分節』が蝦夷地まで到達するまでに、どれだけの飯盛女が唄い、そしてどれだけ没していったのか──。調べる術はありませんが、想像するだに気が遠くなります。
■遊廓を唄った民謡たち
〽三国出村の
女郎衆の髪は
船頭さんにはイカリ綱
三国節・三国港出村にあった遊廓で船頭が長逗留足することから
〽二度と行こまい
丹後の宮津
縞の財布が空になる
宮津節・宮津の遊廓でつい財布の紐が緩んで散財してしまうことから
〽浅間山さん
なぜ焼けしゃんす
裾に三宿もちながら
追分節・浅間山山麓の3宿場には多くの飯盛女いたことから噴火と嫉妬をかけている
■活字史資料の限界
遊廓を調べていると民謡の歌詞が多く登場します。しかし歌詞内容は理解できても節回しを感じとることはできません。その意味で活字の限界があります。歴史理解に感覚・感情は要らない、とする向きもありますが、「当時、多くの人々が遊廓観を共有してきた」ことは事実です。民謡は新聞や絵画などと並んで時代相を浮上させる力を持つものです。同時に共有観を知ることで、共有の周縁部に置かれていた人々にも想いを寄せることができるのでしょう。
言うまでもなく、歌詞は事実を取り上げているとは限らず、語呂合わせ、宣伝効果を意識した、極めて創作性の強いものです。その意味で史資料として用いるには慎重な批判を要しますが、民謡は主に音楽愛好家に、遊廓は歴史愛好家にそれぞれ取り上げられるも、ルーツを同じくする両者が交わることなく、意味や背景が失われつつある現状は等閑視できないものがあります。
■プロを招いて「遊廓を聴く」イベント
今回は、プロの演奏家・三味線の流し 千鳥さんをお招きして、遊廓を取り上げた民謡を実演(三味線と歌唱)して頂きます。あわせてカストリ書房・渡辺豪が、舞台となった遊廓の成り立ちや歴史の陰に埋もれた口碑などを紹介します。
■演目
・鍬ヶ崎浜唄
・新庄節
・会津磐梯山
・三国節
・三十石船舟唄
・下津井節
・島原の子守歌
・千住節
・お江戸日本橋
・れんじ日がさしゃ
・東雲節
※進行ペースにより前後、割愛する場合がございます。
■日時と場所
2024年10月26市(土) 14:00開演(13:30開場)
引き手茶屋・金村(東京都台東区千束4-16-7)
※開演から5分で防犯のため施錠します。遅刻された場合、入場できませんのでご注意ください。
■タイムテーブル
13:30:開場
14:00:開演
15:30:終演・閉場
■キャンセルポリシー
お客様都合による返金はいたしません。
万一イベントが中止となった場合、チケット代全額をお返しします。その際、旅費交通費、手数料その他は補償しません。