オスカーワイルド著「ドリアン・グレイの肖像」は、名言だらけの小説。

2021/3/28(日)



この作品を読んで、驚くのは、

各ページに「名言」がちりばめられているということ。

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序文には、彼が提唱している芸術至上主義の

アフォリズムが記載されています。


「芸術家にとっては美徳も悪徳も芸術の題材である」


道徳的な正しさには価値を置いていません。

コンプライアンス云々で自主規制してしまう昨今では

芸術の幅が狭くなってしまっているのでしょうねぇ・・・(;^_^A


はたまた、

「芸術が映し出すものは、作者の人生ではなく、観客である」


これは、作品の鑑賞においては

観客の人生経験が試される、ということでしょうか・・(;^_^A


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第一章では、

ヘンリー卿が、友人の画家バジルが描いた肖像画を目にします。


画家バジルは言う。

「気持ちを込めて描かれた肖像画は

それを描いた画家の肖像画なのだ」


そして、画家バジルは

ドリアングレイに出会った時のことを回想するのです。

バジルは

美しい青年ドリアングレイを一目見て

逃げ出してしまった・・・。


ヘンリー卿は言う

「良心と臆病は本当は同じものさ。良心の方を看板にしているだけだ」

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第2章では、

画家バジルが、ドリアングレイを描いている傍らで

ヘンリー卿は言う。

「影響というものは、不道徳なものです。

相手は自分本来の考えをなくし、美徳さえ本来のものではなくなる」


ドリアングレイが壊れていくことを暗示しています・・・。

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さらに

ヘンリー卿は、ドリアングレイに言う。


「美は、才能の一つ。美は人を支配者にするのです」」


そして、言う

「神々は、与えたものをあまりに早く奪い去っていく」


ヘンリー卿は、ドリアングレイに

由々しき影響を与えてしまった・・・。

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第3章では、

ドリアングレイの出自を調べるヘンリー卿。

由々しき過去がわかってくる。


ヘンリー卿は言う

「この世に存在する美の裏側には

必ず悲劇的な要素が潜んでいる」


たぐいまれなる美青年の運命や如何に。

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夢のように楽しい食事の席でのおしゃべり。

が、時間は有限です。

オスカーワイルドは、このように表現しています。


曰く・・・

「現実」が、召使という姿をまとって部屋に現れ

侯爵夫人に馬車が待っている旨を告げた。

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第4章では、

美しき女優シビルと出会うドリアングレイ。


ヘンリー卿は言う

「結婚などやめておけ。

男は疲れたから結婚する。

女は好奇心から結婚する。

そして両方ともがっかりするんだ」


まさに真実です・・・(;^_^A

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ヘンリー卿は、さらに言う

「恋に落ちると人は必ず自分を欺くことから始める。

そして、相手を欺くことで終わる。

これが世にいうロマンスというものだ」


まさに真実です・・・(;^_^A

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なぜ、ヘンリー卿は、

ドリアングレイに関わりを持ち始めたか。

それがこの章に描かれています。


彼は、自らの作品を作りたかったのでしょうか・・・。

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第5章で、

美しき女優シビルは、ドリアングレイと出会ったことを

母親に告げる。

が、母親は、いぶかしむ。


恋に盲目となったシビルには、母親の言葉は耳に届かない。

その様子を、オスカーワイルドはこう表現します。


「古ぼけた椅子に座った「知恵」が、薄い唇で彼女に話しかける。

常識という名のもとに、人まねの言葉を連ねただけの「臆病の本」を

引用する」

なんといううまい表現でしょう・・・。

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第6章では

ドリアングレイが女優と婚約したことを

ヘンリー卿は、画家のバジルに告げる。


貴族であるドリアングレイとは釣り合わないと

反対するバジル。


ヘンリー卿は言う。

「結婚させたいのなら、今の言葉をドリアンに言うんだな」

「どう見ても馬鹿げたことをするときは

必ず崇高な目的があるものだ」

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ドリアングレイが女優と婚約したことを

なおも反対するバジル。


ヘンリー卿は言う。

「人の本質を傷つけたかったら

それを強制するだけでいい」


怖いことに、ヘンリー卿がまさにそれを

ドリアングレイに行っている・・・。

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ヘンリー卿と画家のバジルが話していると

ドリアングレイ本人が現れる。


彼は女優シビルへの純愛を朗々と語る。

まだ「善良」である。


一方で「快楽至上主義」を語るヘンリー卿。


オスカーワイルドの一人芝居なのでしょうか。

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第6章では

ドリアングレイは、ヘンリー卿と画家のバジルを

女優シビルが出演する劇場へ連れてゆく。

が、彼女の演技はまるで棒読みのセリフの連続だった。


それを見たドリアングレイは

シビルが愛せなくなってしまう。


ドリアングレイはヘンリー卿の影響で

芸術至上主義に染まっていたのです・・・。

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シビルに芸術性を見出せなくなっただけで

ドリアングレイは別れを告げる。


彼女が演技ができなくなった理由。

それは、あまりにもドリアングレイを愛しすぎた余り

演技に気持ちが入らなくなっていたのです・・・。


それなのに、ああ、それなのに・・・。

ドリアングレイの人生は如何なるや。




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