消える渋谷の思い出

2024/10/3(木)

再開発はどこでも行われていますが、渋谷の場合は街の思い出になるようなものを壊しながら再開発が進められているようです。新しくできる光景は過去を消し去り、懐かしさなど残さないようです。渋谷といえば、ひところは若者の街といわれていました。そのイメージを20年ほど前から変える流れがありましたが、SHIBUYA109がジュニアの聖地だったのはそれほど昔ではないでしょう。

東急東横店がコロナの到来とともに閉店し、東急本店もコロナが終わるころになくなりました。いずれも建物が渋谷のランドマークのようなものだったばかりでなく、買い物にでかける場ということで、人の流れも作っていたことになります。その人の流れが止まってしまい、今はカオスのようなスクランブル交差点付近やセンター街を見物するインバウンド客の観光地となっています。

日々変化している街なので、記憶に残らない街になってしまいます。目的の場所に行く以上のことはできないといってよさそうです。その変化は駅前周辺にとどまりません。裏渋谷ともいわれる、神泉駅の周辺までにまでも及んでいます。なぜ変化しなくてはならないのか、との問いに対する答えは、渋谷駅周辺の土地には投資する価値があるとみられているからでしょう。シャッター街化しているところとは違います。

投資が目指すものは何なのかは自明なことなのでしょうか。まず床面積だけ確保しよう、その中身は後から考えればよい、この地域の価値が上がることは間違いない。そんな思惑が感じられます。なので渋谷はどんな街を目指しているのか、ということはわかりません。まず、地域住民は不在といってよい状態です。地権者の利益計算以上のものがあるのでしょうか。

だからといって、良好な環境が破壊されるというものではなく、人が集まってくるのだろう、ということしか見えてきません。それが悪いことともいえないでしょう。外国資本の餌食になるのはいやだ、との見方もあるかもしれませんが、東京が国際都市を目指すのであれば、避けられないことでしょうし、東京のどこにその可能性があるのか、といわれれば、良好な住宅環境も近くにある渋谷が選ばれそうです。

渋谷の思い出は消え、いつのまにか、思いがけない街がそのあとにできてしまう。それがどんなものなのか、誰も知らない。そんなことのように思えるのです。


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